稲田哲将 研究所

1+1=2になることについて


1+1=2は当たり前だという。しかし、この足し算を現実世界に当てはめようとしたとき、世の中には足し算に似た現象でありながら異なる事象がたくさんあることがわかる。

■どこまで近づいたら2になるか?
一個のリンゴと別の一個のリンゴがあるとする。どこまで近づいたら二個のリンゴといえるだろうか?そのように考えると近くに置いてあることが1+1が2になる原因ではないことがわかる。

■1粒の水滴にもう1粒の水滴を加えると何粒になるか?
1粒の水滴にもう1粒の水滴をくっつけると1粒の水滴になる。
「くっつく」という考え方では、1+1が2になる原因ではないことがわかる。
同様の事例が化学反応の式で出てくる。
2H2+O2=2H2O(2粒+1粒=2粒 2(H-H)+(O-O)=2H-O-H)
この区別があいまいだと上記の化学式で水素2mol+酸素1molが2molの水になるところで躓く。記号として+を使っているので足し算のような気がしているが実は意味が違う。その違和感を明確にしないままにしているとそこから化学がわからなくなる。高校の化学のモルの計算で躓く人の多くは実はここで躓いている。

■長さを測ることについて(本当の長さはとは何?)
有名な話ではアメリカとカナダの国境の長さの話があります。この話は、フラクタル関係の入門書を読むとよくエピソードとして出てくるものです。アメリカが発表するカナダとの国境の長さとカナダが発表するアメリカとの国境の長さは異なります。これはどちらかが不正をしているわけではありません。

順位 カナダとの国境長さ 順位 州、準州 アメリカとの国境長さ
1 アラスカ州 2,475 km (1,538 mi) 1 オンタリオ州 2,760 km (1,715 mi)
2 ミシガン州 1,160 km (721 mi) 2 ブリティッシュコロンビア州 2,168 km (1,347 mi)
3 メイン州 983 km (611 mi) 3 ユーコン準州 1,210 km (752 mi)
4 ミネソタ州 880 km (547 mi) 4 ケベック州 813 km (505 mi)
5 モンタナ州 877 km (545 mi) 5 サスカチュワン州 632 km (393 mi)
6 ニューヨーク州 716 km (445 mi) 6 ニューブランズウィック州 513 km (318 mi)
7 ワシントン州 687 km (427 mi) 7 マニトバ州 497 km (309 mi)
8 ノースダコタ州 499 km (310 mi) 8 アルバータ州 298 km (185 mi)
9 オハイオ州 235 km (146 mi)
10 バーモント州 145 km (90 mi)
11 ニューハンプシャー州 93 km (58 mi)
12 アイダホ州 72 km (45 mi)
13 ペンシルベニア州 68 km (42 mi)

アメリカが発表しているカナダとの国境の長さは、5525mile
カナダが発表しているアメリカとの国境の長さは、5524mile
この違いはなぜ生じているのだろうか、単なる誤差であろうか?

結論から言うと500m毎に計測した場合と1000m毎に計測した場合の違いが重なってできた誤差である。500m毎に測ったほうが山などの凹凸がある分、長くなるのです。
それでは100m毎に測ったらもっと正確だろうか?10m毎では?測る単位を短くすればするほど国境の長さは長くなる。最後には砂粒の凹凸まで長さに含めるような事態となるででしょう。その時の国境線の長さは、今発表されている長さの何倍にもなります。
物の長さを測るなんて簡単な気がします。しかし、使う物差しによって長さが異なるというこの現象を前にしたとき物の長さを測るとはどのようなことかについて改めて考えなくてはなりません。

■積雪の足し算
20:00に20cmの積雪がありました。20:00から21:00までに10cmの積雪がありました。さらに21:00から22:00までに10cmの積雪がありました。
この時、積雪は、20cm+10cm+10cm=40cmにはなりません。先に積もった雪が圧縮され40cmよりも少ない積雪となっているはずです。それでは30分毎に測れば正確な値が出てくるでしょうか?これは先ほどの国境の長さと同じ問題が生じそうです。雨の場合は10mm+10mm=20mmとなりそうなのとは対照的です。

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